がんらい、物置の空間を大切にしたのは、日本のすまいの伝統であった。たとえば、欧米と日本の伝統的なすまいを、物の収納という観点から比較したばあい、欧米のすまいは「博物館型」であり、日本のそれは「劇場型」になぞらえることができる。つまり欧米のすまいは、へやのなかに大きな戸棚をはじめ、いろいろな家具をもちこみ、そのなかに備蓄用食糧以外のすべてのものを収納した。欧米のすまいのホールやリビングルームをみると、さながら博物館のようにたくさんの肖像画、彫刻、動物の首や毛皮、鉄砲、絵皿などがならべられ、食器類も、わざとよくみえるように、ガラス戸棚に収納される。
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ところがむかしの日本の座敷をみると、そこにあるのは一本の掛軸と、一輪の花か壷ぐらいのもので、ほかにはなにもない。座ぶとんすらも通常はおいていない。客がくると、蔵のなかから、座ぶとんをはじめ食膳の類まではこびだされる。客がかえると、またもとの蔵に収納される。座敷はいつもなにもない状態、ちょうど劇場の舞台のようなもので、場面の進行に応じて、必要な大道具や小道具が、楽屋裏から舞台のうえにひっぱりだされるのである。またほとんど唯一の室内の装飾である掛軸や花びん類も、季節に応じてしょっちゅうとりかえられる。