重要な機能は「コミュニティ」だ。アマゾンのホームページで書籍やCDなどを見ると、「この本についてコメントを」「この演奏について感想は」などとあって、批評を自由に記述し、閲覧できるようになっている。そればかりか、その意見に対して「この批評が有効だと思う人はイエスをクリックしてください」などというコーナーまでが設けられており、そこでは、本好き、音楽好きならではの「生の声」を交換できるのだ。こうしてユーザー側の情報が蓄積された同社のサイトには、同好の士たちが自然に集まってくる。そしてアマゾンのコミュニティの外側に別の小さな輪がいくっもできて、ある歌手の新譜についてディスカッションしたり、同じ通信技術の本を読んだ人たちが新しい技術動向についてディスカッションしたりする場になる。これら「リコメンデーション」「パーソナリゼーション」「コミュニティ」を通して言えることは、ウェブビジネスでもっとも重要なポイントは「スティッキネス」であるということだ。stickyという英語は、「ねばねばする」という意味の形容詞。ガムを踏んでしまったときになかなか取れないような状態をさす。従来の流通業の世界では顧客の「囲い込み」という概念が重要だった。ある商圏で重要な立地に店舗をつくって顧客を囲い込み、シェアを確保するわけだ。ところがウェブの世界では、「リンク」と言って、ある画面から別の画面へ、クリックひとつで瞬時に移動できてしまう。したがって「囲い込み」は本質的に難しい。インターネットと従来のITとの最大の違いは、従来のITは基本的にある企業グループなら企業グループ内を専用線でつないだ「クローズド(閉じられた)ネットワーク」であったのに対して、インターネットのほうは「オープン(開かれた)ネットワーク」だということだ。オープンであるということは誰でも入れるからいいことであるのだが、同時に、非常に移ろいやすいユーザー層をつくってしまうことをも意味する。それを、いかに「くっついて離れない」ようにするか、というのがポイントになるのである。