口で負けた次男が、「おまえなんか、Aコースじゃねえか」というようなののしり方をしていたように記憶しています。もしかしたら、三男の方がものごとに対する洞察力がはるかに進んでいるようにも思えたものでした。ある日、久しぶりに三男と塾へ一緒に行くことになりました。何かはずんでいる三男と、楽しく歩きながら信号で止まったとき、私の頭の中に「動機づけ」という言葉が突然うかびました。そうだ動機づけしなくちゃという気持ちで、ふと、にこにこしている三男を見下ろしました。何を言うか考えていなかったのに、「どうだ、○○ちゃん(三男)は、早稲田にしたら?………。」早稲田の意味がわかっているはずもないと思っている私の予測に反して、三男の顔がにわかにくもり、みるみる自分のからにこもるカタツムリのように目の前から消えていくような印象がありました。「しまった……」と思ったときすでにおそく、スタスタと塾へむけて父親を振り捨てて歩いていく三男の後ろ姿におもわず「失敗した」と思ったのでした。これは小学校五年生の春頃のことだったと思います。